芸術性と人間性

  • 2017年07月17日

芸術が好きだ。

自分の仕事は一つの作品だと考えながら仕事をしている。

どんなに汚い仕事であっても、そこに綺麗なハーモニーが流れるような、

美しさを求めてきた。

 

作品には人間性が出る。

芸術家だから、天真爛漫で、時間や金に無頓着であっても、

奇天烈であっても構わない。

しかし、幼稚な思考であるとわかったら、一気に興ざめである。

思考が幼稚であったら、どんなに技巧が優れていても

その作品には魂がこもっていないと感じてしまう。

 

以前陶芸に打ち込んでいた時期があった。

腕の良い師匠のお陰で様々な技法を習得することができた。

大会に出れば上位に毎回入選していた。

ニューヨークで展示会まで開かせたもらった。

陶芸家と名乗っているような人の作品の良し悪しは

すぐに見破ることができるようになった。

それほど没頭した。

技術的にある程度の域に達すると、その先にあるのは「深淵」である。

深い井戸を淵から覗いてしまったのである。

これから先に進むには人を磨くしかないと自覚した。

それからは轆轤を回すことをやめてしまった。

10年前のことである。

 

陶工のような技巧を持っていない、かといって陶器を芸術まで高める能力がなければ

陶芸家などと名乗るべきではないと思う。

テレビに出ているような人の作品を見たことがあるが、

とてもその域に達していないと感じてしまったことが幾度かある。

作品を見れば人間性が見抜けてしまうのである。

作品とは怖いものだ。