海の男ときめてる俺も 遠くなってく港の街に

  • 2010年08月11日

車窓の左右にある山下公園もマリンタワーも、何度か心に反芻した姿そのままに、そこに自明に存在しているとしか思えなかった。
喜びの涙が不安を取り除き、彼らを一息に万能の人間の心境へ押し上げていた。
山下橋を渡って右折した車は、鼠いろの雨覆いをした艀に埋まっている運河を右に、すぐにフランス領事館横の坂を上り始めた。 谷戸坂
「午後の曳航」―三島由紀夫