教訓

  • 2008年04月18日

若いころの話だが、東大の大学院で学んで幾つかの教訓を得た。そのうちのひとつが「自分で理解できるまでは手を出すな」というものがある。
当社は排出権も取り扱っているが、自社で植林を行ない管理しているというユニークな会社である。率直なところ業務に必要なプロセスに関して両者を比べると、遙かに植林の方が煩雑である。新規植林に関しては幾つか乗り越えなくてはならないハードルはあるが測定に関しては既に様々なデーターがある。
それでも当社の植林地内及びその周辺地に関しての科学的データーの蓄積や、林業試験場等からのデーター収集は欠かせない。またそもそも長期間に渡り管理する必要があるので民間企業が管理するのでは信頼性に欠けてしまうと言われかねない。その点をクリアにするためにも現地政府・地方自治体の協力なしでは成り立たないのだ。
勿論排出権を創出している化学工場とかにも火事や運営会社のクレジットリスクだってあるのだが、植林に関しては期間が長い分だけしっかりとした管理体制が維持できるかどうかがポイントとなる。そして自然を相手にしているので鹿に幹を齧られた等という極めて現実的な問題にも対処しなくてはならない。
好きでなければ続かないと思う。排出権も90年代半ばから既に金融商品の一種として米国で産声を上げて以来の付き合いだから理解できる。植林に関しても炭素固定化の測定方法などはそれほど難しくない。難しいのは永続性と固定化後の処理の仕方である。
しかし、REDD(森林減少・劣化からの温室効果ガス排出削減)についてはどうしたものかと悩んでしまう。カーボンフリーコンサルティングの植林地は50年以上森林でなかった土地しか選んでいないが、あまりに広大な土地なので一部には森がある。簡単に言えば森を伐採しないできちんと管理すればその分を吸収源を守った=CO2排出を防いだという図式なのだが、その算出には実際には複雑なプロセスを伴う。
また、算出方法以前の問題として、森林産業の活性化につながるのか?資金を公正に分配できるメカニズムの構築、森林に依存して生活していた方々に寄与することができるかなどの点について未だ確証が持てないのだ。学者や政府機関に教えてもらってもどうしてもまだ納得いくレベルまで落とし込めていない。また今日も森林認証を行っている方々と打ち合わせをして教えていただいたのだが、まだ未知数な部分が多く残ってしまっている。
多くの可能性を秘めているREDDだが色々議論されている段階なので当社が自信を持って踏み切るには早いというスタンスを取らざるを得ない。
しかしいつか実現していきたい次のステップであるとは考えている。