クズネッツ曲線を考える (Kuznets Curve: EKC)

  • 2017年10月31日

環境の改善には、知識と行動が必要だと何度も書いて来た。

ではどんな知識が必要なのだろうか?

週末勉強した、一例を挙げよう。

グズネッツ曲線 (Kuznets Curve: EKC)を改めて考えてみた。

 

クズネッツ曲線は、アメリカの経済学者サイモン・クズネッツが提唱した曲線である。

環境ビジネスをやっている人は皆知っている有名な曲線である。

資本主義経済の発展は社会の不平等を広げるが、その差はやがて自然に縮小され不平等が是正されるとする。

X軸に経済発展、Y軸に社会の不平等をとり、中心が高くもりあがった逆U字型の曲線となる。

環境分野に当てはめたのが「環境グズネッツ曲線」である。

 

Y軸が環境悪化となる。つまり、ある一定の経済発展を遂げていくと環境悪化は鈍化していくと言うものである。

果たしてこの仮説はただしいのだろうか?

 

これについては幾つもの検証結果がある。そこから学ぶのである。

世界銀行の1992年の分析では、所得増加が環境劣化に直接繋がらないとしている。

低所得国においては所得の増加に伴って大気汚染は悪化するが、

高所得国では所得の増加に伴って大気汚染が改善する傾向が見られた。

つまりこの仮説は正しいことを示している。

しかし大気汚染の項目により差があることも確認された。

二酸化硫黄や浮遊粒子状物質についてはグルネッツ曲線が確認された。(Selden and Song 1994など)

しかし、温室効果ガスについては転換点が非常に高く、

その転換点よりも高い所得の国はごく一部に限られていることがわかった。

 

この理由は「直接的な健康被害がある汚染物質については早期に規制される」ことに起因される傾向にあることで説明がつく。

温暖化対策というのはこの転換点を低くする活動であるとも言える。

どのような活動が転換点を低くしたのかということについても検証結果が複数ある。

(Farzin and Bond 2006,Muhandiki et al 2005, Welch and Hibiki 2002, Pargal and Wheeler 1996)などである。

彼らの分析によると、「教育水準向上・ガバナンス改善・格差是正により転換点が下がる(左に移動する)ことが

あきらかになった。

 

 

 

ベーシックインカム再考

  • 2017年10月31日

選挙のたびに話題になるベーシックインカム。

自分の理解を整理する意味でも幾つかの書籍を読んでみました。

 

ベーシックインカムは貧困問題を解決する一つの手段にはなりえるでしょう。

しかし実現することは困難だと言わざるを得ません。

ベーシックインカムは平たくいうと、社会保障制度を廃止するということです。

 

BIの導入によって次のことが起こると考えられます。

*社会保障制度を維持してきた行政関係者の多くが職を失う。

*システムの変更、一時退職金などの一時的支出が増える。

*税収増はできるか不明だし、できたとしても効果がでるのは何年も掛かる。

*原資が足りない。

*高所得者へ支払うことの意義が不明。

*得られるものとの対価が見合わない。

 

現時点において国家レベルでベーシックインカムを導入している国は存在しません。

一部アラスカ、フィンランド、ブラジルでの一部導入や試験が挙げられますが、実現には程遠いのが現状です。

立法府がほぼ同時にこれらを達成することはできないと考えられます。

 

社会保障費に回す分を廃止するだけでなく、公共事業関係費、中小企業対策費、農林水産省予算、地方交付税も大幅に削減することになります。

これでできることは、二十歳以上に月7万円、二十歳未満に月3万円を支払うだけです。

この実現に100兆の原資が必要になるからです。

ちなみに月8万円のBIの導入のためには所得税は50%にする必要があると言われています。

 

貧困層をなくすための原資は3兆円と言われています。

消費税1パーセント相当です。

ならば消費税の使途を絞った上で1パーセント増税した方がよほど効率的でしょう。

社会保障は民間に丸投げという前提でのベーシックインカムの導入は無責任というものです。