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SCOPE3算定について想う

  • 2021年09月10日

世界的にカーボンニュートラル時代、カーボンフリー時代に突入した。

まずは自分の排出量測定をしなくてはならない。

まさに、SCOPE1,2である。

しかしSCOPE3については想うところが多々ある。

SCOPE3についてはTCFDやCDPでも求められている。

そしてSCOPE3の目的はサプライチェーンの排出量を把握することではあるのだが、正確性よりも、どのカテゴリーが多いのか少ないのかの割合を見ることが目的の一つである。

とはいえ、業種によっては算出が困難なことが多々あるのである。

例えばカテゴリー毎に見てみよう。

1原材料については、2次データを使用することが多いのであるが、それは2005年の確定値を用いる。今から15年以上前のものである。些かというかかなり古いのだ。2015年版の方が新しいが確定値ではないし、それでも5年以上前のデータである。

3 電気・熱であるが、これはSCOPE1,2に含まれないものである。発電に必要な燃料やガソリンの採掘、精製などが該当するが、これは必要だろうか?SCOPE2でまとめてもいいような気がする。

10 販売した製品の加工については悩むことが多い。定量的な分析をしているのに、判断基準が定性的なのだ。「割合が大きい」とか、「貢献する可能性」とか「重要である」との表現である。

11 販売した製品の使用については、単年度の報告なのにも拘らず、生涯における稼働時の排出を求めなくてはならない。製品寿命については概算である。

14 フランチャイズについては、業種によっては膨大な数になる。主宰している側では、加盟者の使用する燃料などはscope2に入れなくてはならない。

15 投資については、注意が必要である。まず、子会社関連会社は全て含めないとならない。100%子会社ならば、SCOPE1.2に入れた方が良いと思われる。(実際のところ、「含めてもよい」とされている)

機関投資家だけではない。一般事業者にも適用されるのである。

機関投資家に至っては、もはや不可能である。1000社に投資していますなんて当たり前のようにある。1000社それぞれを算出して、投資額の比率で算出するなんて不可能である。しかも株式投資のみならず、債券投資、プロジェクトファイナンスも含む。カテゴリー15でいうところの、排出量とは、投資先のSCOPE1,2の排出量である。SCOPE3ではない。

「おいおい、投資比率が20%未満のような支配力を有していない投資先は除くだろう」と普通は考える。

しかし、よく見て欲しい。「必須」項目として「報告企業が排出している主体 (entity)に対して財務支配力 も大きな影響力も有していな い場合(通常、所有権は 20% 未満)の、報告企業が自社資本 とバランスシートを用いて行 う株式投資」とある。「インベントリから 株式投資を除外する場合の閾値(出資 比率 1%以下など)を設定してもよい」としているのである。

これは大いに課題がある。

これでは、機関投資家(保険会社など)、金融機関はカテゴリー15が算出できない。そしてFの評価になってしまう。

被投資企業が関与している経済セクターごと に投資をグループ分けすることで、経済データ手法を使用することはできる。環境拡張型産業連関(EEIO デ ータベース)を参照して、関係する経済セクターの EEIO 排出係数を収集するしかない。

それにしてもカテゴリー15のみが突出して作業量が増えてしまうではないか。

まずはその1000社の中でSCOPE1,2の算出しているかどうかの有無を確認する。

そして、算定値がなかったときには、EEIOデータベースから経済セクターから抽出する。ただ、このデータベースはGHGプロトコルであり、日本のセクター毎に当てはまるというわけではない。つまり差が出るであろう。

差が生じる可能性が高いにも拘らず膨大な作業量を要求されるのである。

この制度は修正が必要だと思われる。実情に則していないのである。

もっと時代が進み、ブロックチェーンやDX化が進めば、算定も自動化されていくだろう。

現在のような黎明期において、サプライチェーンの排出量を求めるのは、自社の努力では超えられない壁が多いのである。サプライチェーンの協力がなければ成り立たない制度は、制度として見直しが必要である。