環境難民の法的枠組み
- 2025年08月20日
環境難民とは、気候変動や自然災害などの環境要因によって居住地を離れざるを得ない人々を指しますが、国際法上の難民には該当せず、1951年難民条約で定義される「迫害を受ける恐れがある人」という条件には含まれません。そのため、越境した場合でも条約に基づく保護を受けることができず、強制送還のリスクや長期滞在権の確保が困難になります。受け入れ国によって扱いが異なり、雇用や教育、医療など基本的人権の保障も不十分になりがちです。気候変動による移住は予測可能な場合もありますが、法的保護がないため計画的な避難や生活再建が難しく、結果として事後対応型の支援に偏り、受け入れ国での社会・経済的緊張も生まれやすくなります。2050年における環境難民の数は予測によって幅がありますが、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は2億人以上、世界銀行の「Groundswell」レポートでは最大2億1600万人、さらに最悪のシナリオでは最大12億人に達する可能性があるとされています。これに対して、戦争や紛争による難民は2023年末時点で世界に約1億人存在し、多くは迫害や紛争から逃れた人々です。環境難民と戦争難民は原因は異なるものの、同じ地域で重なることが多く、気候変動が紛争を激化させる場合もあるため、両者は相互に影響し合う関係にあります。このように、環境難民は国際的な法的枠組みの欠如によって権利保障や支援が十分でなく、将来的に大規模な移住を引き起こす可能性がある一方で、戦争難民と同様に社会的・経済的緊張を生むリスクも高いため、今後は国際条約の創設や国内法整備、地域的枠組みの構築など、包括的な対応が求められています。