企業のサステナビリティ情報開示では、近年 TCFDとTNFDという2つのフレームワークが注目されています。
TCFDは気候変動、TNFDは自然資本を対象とした情報開示の枠組みです。
TCFDは、Task Force on Climate-related Financial Disclosuresが策定した、気候関連財務情報開示の国際的なフレームワークとして広く普及しました。
企業は、気候変動が自社の財務や事業に与える影響について、
ガバナンス
戦略
リスク管理
指標と目標
の4つの柱に沿って開示することが求められてきました。
しかし近年、このTCFDの内容は、International Sustainability Standards Board(ISSB)が策定するサステナビリティ開示基準に統合されています。
ISSBは、IFRS Foundationのもとで設立された国際的な基準設定機関であり、企業のサステナビリティ情報開示の国際基準を策定しています。
現在、気候関連の開示はISSBの
IFRS S1(サステナビリティ開示全般)
IFRS S2(気候関連開示)
という基準の中に位置づけられています。
特にIFRS S2は、TCFDの4つの柱をほぼそのまま引き継いでおり、実務上は
「TCFDの考え方をベースとしたISSB開示」
と理解することができます。
一方、自然資本や生物多様性に関する情報開示を目的として策定されたのが
Taskforce on Nature-related Financial Disclosures(TNFD)です。
TNFDは、気候変動だけでなく、
生物多様性
水資源
森林
土地利用
など、企業活動と自然環境の関係を対象としています。
TNFDもTCFDと同様に、
ガバナンス
戦略
リスク管理
指標と目標
という4つの柱で構成されており、企業にとっては既存のTCFD対応の枠組みを活用しながら導入することが可能です。
今後、企業のサステナビリティ情報開示は
気候変動(ISSB/旧TCFD)
自然資本(TNFD)
という2つの領域を統合して進めていくことが重要になると考えられています。
企業にとっては、気候変動だけでなく、生物多様性や自然資源への影響も含めた総合的なリスク管理と情報開示が求められる時代になりつつあります。
近年、企業の環境対応は
脱炭素(カーボン)だけでなく自然資本(ネイチャー)へと広がっています。
その中心となる国際的な枠組みが
Taskforce on Nature-related Financial Disclosures(TNFD)です。
TNFDは、企業活動が自然環境に与える影響や、自然への依存関係を整理し、
それに伴うリスクと機会を開示するためのフレームワークとして
世界的に注目されています。
2023年に最終提言が公表され、
現在は多くの企業や金融機関が対応を検討しています。
しかし企業担当者からは次のような疑問が多く聞かれます。
- TNFDとは具体的に何をするのか
- どこから取り組めばよいのか
- 他の環境枠組みとの関係はどうなるのか
本記事では、企業実務の視点から
TNFDの概要、実務ステップ、企業事例、対象業界を整理します。
TNFDとは何か
TNFDは、企業と自然との関係を整理し、
そのリスクと機会を開示するための枠組みです。
この考え方は
Task Force on Climate-related Financial Disclosures(TCFD)
と非常によく似ています。
TCFDが気候変動を対象としているのに対し、
TNFDは対象を 自然資本全体へ拡張しています。
対象となる自然資本には例えば次のものがあります。
これらは企業活動のサプライチェーンと密接に関係しており、
事業リスクにも直結する可能性があります。
例えば
- 原材料調達による森林破壊
- 水不足による生産リスク
- 生物多様性への影響による規制強化
などです。
そのため金融機関や投資家は、
企業の自然資本リスクにも注目し始めています。
TNFDと他の環境枠組みの関係
企業の環境対応は、
TNFD単独で進めるものではありません。
実際には次のような枠組みと密接に関係しています。
- CDP
- Science Based Targets initiative(SBTi)
CDPでは
といったテーマで企業の環境情報が評価されます。
またSBTでは、温室効果ガス削減目標に加えて
**Science Based Targets for Nature(SBTN)**の議論も進んでいます。
このように現在の国際的な流れは
カーボン(気候変動)とネイチャー(自然資本)を統合して管理する方向
へ進んでいます。
そのためTNFD対応では
- GHG排出量算定
- サプライチェーン分析
- 自然資本影響評価
- 情報開示
を統合的に整理することが重要になります。
TNFD対応の実務ステップ
企業がTNFD対応を進める際には、
一般的に次のようなステップで整理されます。
1 自然資本との関係の把握
企業活動が
- どの自然資本に依存しているか
- どの自然資本に影響を与えているか
を整理します。
多くの場合、影響は
サプライチェーン全体に広がっています。
2 リスクと機会の分析
自然資本との関係から生じる
リスクと機会を分析します。
例
リスク
- 水不足による生産停止
- 森林破壊に関する規制
- 生物多様性リスク
機会
- 環境配慮型製品
- 持続可能な調達
- 新しいビジネス機会
3 データ整理
代表的な環境データ
これらはCDPやSBTと共通する部分が多く、
統合的に管理することが重要です。
4 目標設定
例えば
などの目標を設定します。
5 情報開示
多くの企業では
などの形で開示されます。
TNFD対応を支援できる企業はまだ多くない
TNFDは比較的新しい枠組みであり、
企業実務としての対応方法はまだ発展途上です。
自然資本の評価には
- サプライチェーン分析
- GHG排出量算定
- 環境データ管理
- 情報開示フレームワーク
など、複数分野の専門知識が必要になります。
そのため TNFD対応を実務として支援できる企業は、現時点ではまだ多くありません。
企業にとっては
を統合的に整理できる専門的な支援が重要になります。
TNFD対応の企業事例
すでに世界ではTNFDに関連する取り組みを進めている企業も増えています。
オランダの金融機関
ING Groupは、
自然資本リスクを金融リスク管理の中に組み込む取り組みを進めています。
また食品企業の
Nestléは、
原材料調達における森林破壊や水資源の影響を評価し、
サプライチェーン全体での自然資本管理を進めています。
日本でも
などの分野でTNFDへの対応が検討されています。
TNFD対応が必要になる主な業界
TNFDはすべての企業に関係しますが、
特に次の業界では影響が大きいと考えられています。
食品・農業
農産物や水資源への依存が大きいため
自然資本との関係が非常に強い産業です。
化学・素材
原材料調達や製造プロセスにおいて
土地利用や環境影響が大きい場合があります。
紙・パルプ
森林資源との関係が直接的な産業です。
商社
グローバルなサプライチェーンを持つため
森林や鉱物資源などの自然資本リスクが重要になります。
金融機関
投融資先の自然資本リスクを評価する必要があります。
ネイチャー対応は企業戦略の重要テーマへ
これまで企業の環境対応は
主に脱炭素が中心でした。
しかし現在は
などを含めた
総合的な環境戦略が求められています。
TNFDは、企業と自然との関係を整理し、
将来のリスクや機会を把握するための
重要なフレームワークとなりつつあります。
今後、金融機関や投資家による企業評価の中でも
自然資本への対応は重要な要素になると考えられます。
そのためTNFDは、単なる情報開示ではなく
企業の経営戦略の一部として取り組むテーマと言えるでしょう。
https://www.carbonfree.co.jp/pkobo_news/upload/900-0link_file.pdf