邂逅
- 2026年05月11日
渋谷 BODY & SOUL へ。
大槻“KALTA”英宣さん ds
クリヤ・マコトさん pf
納浩一さん bs
太田剣さん as
Modern Jazz / Standard / Original
日本のジャズを、長い時間、静かに、そして力強く支えてきたこの名店も、9月に幕を下ろします。
この夜、メンバーから京子ママへ花束が贈られる場面がありました。
その花束は、単なるお祝いではなく、長い時間この場所を守り続けてきた方への、深い敬意と感謝のように見えました。
その光景を見ていたら、胸の奥に、いろいろな時間が込み上げてきました。
私が初めて BODY & SOUL を訪れたのは、90年代初頭の六本木時代でした。
あれから、ずいぶんと時間が流れました。
六本木、青山、そして渋谷。
街は変わり、時代も変わり、音楽を聴く環境も大きく変わりました。
それでも、この店には、いつも変わらず「ジャズが生きている」という空気がありました。
京子ママが守り続けてくださったこの場所で、どれほど多くの音楽が生まれ、どれほど多くの人が励まされ、どれほど多くのミュージシャンが輝いてきたのだろうと思います。
長い間、本当にありがとうございました。
さて、肝心のライブですが。
一曲目から、文字通り、口があんぐり開いてしまいました。
ほぼ全てがオリジナル曲。
にもかかわらず、そこにあったのは、難解さではなく、圧倒的な音楽そのもの。
強靭で、自由で、繊細で、そして美しい。
音が鳴った瞬間に、こちらの身体の中の何かが、すっと整えられていくような感覚がありました。
大槻“KALTA”英宣さんのドラムは、圧倒的な推進力で音楽を前へ押し出しながら、決して乱暴ではなく、一打一打に意思と呼吸がありました。
クリヤ・マコトさんのピアノは、知性と情熱、構築と閃きが同居していて、音楽全体の景色を大きく広げていました。
納浩一さんのベースは、太く、深く、温かく、まさに音楽の大黒柱でした。
その上で全員が安心して自由に飛び回っているようでした。
以前 BEACH HAYAMA にもご出演いただいた納さんに、昨夜ご挨拶できたことも、とても嬉しい時間でした。
しかもこの日は、納さんのTシャツを着て伺いました。
我ながら、少しファン感が出すぎていたかもしれません。
そして、太田剣さん。
太田さんは、大学のジャズ研の一つ上の先輩です。
学生の頃から、本当に素晴らしいプレイヤーであり、音楽に対しても人に対しても誠実な方でした。
その太田さんが、その後も途方もない研鑽を重ね、今、あのステージで、あの音を出している。
アルトサックス、そしてソプラノサックスの音が、鋭く、深く、そして美しく空間を切り開いていく。
その姿を見ながら、才能のある人が、長い時間をかけて本気で音楽と向き合い続けると、ここまでの場所に到達するのだなと、胸が熱くなりました。
それにしても。
明日から自分が楽器に触るのを、少しためらってしまうほどの演奏でした。
ニューヨークの Smalls のセッションに立つことを怖がっている自分が、少し情けなくなるほどでした。
一流のプロフェッショナルが本気で集まると、音楽はここまで遠くへ行けるのか。
そのことを、真正面から見せつけられた夜でした。
もちろん、セッションにはセッションの学びがあります。
人と音を合わせること。
場に慣れること。
瞬間に反応すること。
それは、とても大切です。
でも昨夜のように、本当に素晴らしい音のシャワーを全身で浴びることは、また別の意味で必要なのだと思いました。
サックスを再開して、1年半。
まだまだ思うようには吹けませんし、理想の音には遠く及びません。
それでも昨夜は、しみじみと、再開してよかったなあと感じました。
こんな夜に心を動かされ、こんな音に憧れ、また楽器を手に取りたいと思えること。
それだけでも、十分に幸せなことなのかもしれません。
上手くなりたい、という気持ちのさらに奥にあるもの。
自分は、どんな音を出したいのか。
どんな音楽に、少しでも近づきたいのか。
何を目指して、これから楽器を吹いていくのか。
そんなことを、改めて考えさせられました。
BODY & SOUL という場所に流れてきた長い時間。
京子ママが守り続けてくださった灯。
そして、昨夜ステージの上で鳴っていた、凄まじいほど美しい音楽。
大槻“KALTA”英宣さん、クリヤ・マコトさん、納浩一さん、太田剣さん。
このような演奏を目の前で聴かせていただけたことに、心から感謝します。
昨夜は、ただライブを聴きに行ったというより、
日本のジャズが積み重ねてきた時間と、
それを守ってきた場所と、
その先端で今も燃え続けている音に、
静かに立ち会わせてもらったような夜でした。









