企業の環境対応は、大きく2つの段階に分けられます。
・実態が伴っている段階
・表現が先行している段階
問題となるのは後者、いわゆる「グリーンウォッシュ」です。
グリーンウォッシュは、単なる誇張や不正というよりも、企業活動の構造の中で生じやすい現象です。
第一の要因は、機能分断です。
企業内部では、環境対応を進める部門と、情報を外部に伝える部門が分かれています。
この分断により、部分的な取り組みが全体像として表現されたり、将来計画が現在の成果と混同されたりするズレが生じます。
第二の要因は、外部からの要請の急速な増加です。
近年、投資家によるESG情報の重視、サプライチェーン全体での排出管理、各種開示フレームワークへの対応が同時並行で求められています。
これらは時間的猶予を伴わないため、企業は未完成の状態でも開示する判断を迫られます。
その結果、実態の整備よりも開示や表現が先行する状況が生まれます。
第三の要因は、評価基準の未成熟です。
環境対応は分野ごとに指標や算定方法が異なり、どこまでを削減とみなすか、どの範囲を開示対象とするかについて完全な統一がなされていません。
この曖昧さが企業ごとの解釈の幅を生み、結果として表現のばらつきにつながります。
しかし、この状況は大きく変わりつつあります。
第一に、データの精緻化が進んでいます。
排出量や削減量はスコープ別に定量管理され、比較可能性が高まっています。
第二に、第三者検証の重要性が増しています。
開示情報は監査や保証の対象となり、外部からの検証を前提としたものへと移行しています。
第三に、ステークホルダーの評価が高度化しています。
投資家、金融機関、顧客は、数値の整合性、継続性、事業との関連性を重視するようになっています。
これらの変化により、表現だけで評価される段階は終わりつつあります。
環境対応は、印象から実体へ、そして任意から前提へと移行しています。
グリーンウォッシュは過渡期に特有の現象ですが、その許容範囲は確実に狭まっています。
今後求められるのは、取り組みそのものだけでなく、それを正確に、過不足なく伝える能力です。
企業の環境情報開示を評価する国際的な仕組みとして広く知られているのが、CDP (Carbon Disclosure Project)です。
CDPは、企業に対して気候変動、水、森林などに関する質問書を送り、その回答を評価します。
主な評価分野
スコア
評価は投資家や取引先にも公開されるため、企業のESG評価に大きな影響を与えます。
CDP回答には
などが求められます。
企業にとっては、環境経営を進める重要なツールとなっています。
近年、脱炭素経営に取り組む中小企業が増えています。その際に注目されているのが「中小企業版SBT」です。
SBTとは、企業の温室効果ガス削減目標を科学的根拠に基づいて設定する仕組みで、Science Based Targets initiativeが認定しています。
中小企業向けには、簡略化された制度が用意されています。
特徴
- 簡易な申請
- Scope3算定不要
- 短期間で取得可能
メリット
- 脱炭素経営の信頼性向上
- 取引先からの評価向上
- ESG投資対応
大企業からの要請により、サプライチェーン全体での脱炭素が求められる時代になっています。中小企業版SBTは、その第一歩として有効な制度です。
被災された方々に、改めて心よりお見舞い申し上げます。
そして、今なお復興の途中にある方々にも、心よりお見舞い申し上げます。
震災の翌日から、私は福島県に現地入りしていました。
そのため、2011年3月12日15時36分頃、福島第一原子力発電所で発生した水素爆発の際には、すぐ近くにいました。
空に立ち上るキノコ雲を眺めながら、
「これはもう駄目かもしれない」
そう思い、死を覚悟した瞬間のことを、今でも鮮明に覚えています。
その後すぐに放射線チェックを受けました。
身体だけでなく、身につけていたものや荷物のすべてを確認されました。
そして、被ばくしていないことが確認されました。
その後も、何度も何度も物資を積み、被災地へピストン輸送を続けていました。
当時の記録はこちらです。
https://carbonfree.co.jp/cp-bin/blog/?m=20110312
被災地では、ローカルラジオから同じ曲が何度も流れていました。
負けない事
投げ出さない事
逃げ出さない事
信じ抜く事
駄目になりそうな時
それが一番大事
負けない事
投げ出さない事
逃げ出さない事
信じ抜く事
涙見せてもいいよ
それを忘れなければ
— 「それが大事」
それが大事
(大事MANブラザーズバンド)
良い曲ですね。
闇に吸い込まれそうになる気持ちを、何度も引き戻してくれる曲でした。
(2011年3月18日)
あれから16年。
災害や戦争のない、穏やかな日々。
そんな当たり前の日常が、どれほど大切なものなのかを、改めて思います。
穏やかな日々が、一日も早く訪れることを願ってやみません。
企業の脱炭素経営において、GHG排出量の算定は基本となる取り組みです。
排出量は一般的に
の3つに分類されます。
この分類は、Greenhouse Gas Protocolによって定義されています。
Scope1
自社が直接排出する温室効果ガスです。
例
Scope2
電力などエネルギー購入に伴う間接排出です。
例
Scope3
サプライチェーン全体の排出量です。
例
多くの企業では、Scope3が排出量の大部分を占めるといわれています。
Scope3算定のポイント
- サプライチェーンの把握
- 活動量データの収集
- 排出係数の選定
- 算定方法の透明性確保
Scope3算定は、CDP回答やSBT目標設定の基礎となります。企業の脱炭素戦略を進めるためには、まず排出量の正確な把握が不可欠です。
近年、企業のサステナビリティ対応は、気候変動だけでなく自然資本へと拡大しています。その中心にあるのが、Taskforce on Nature-related Financial Disclosures(TNFD)です。
TNFDは、生物多様性や水資源、森林などの自然資本に関するリスクと機会を企業が開示するための国際フレームワークです。2023年に最終提言が公表され、多くの企業が対応の検討を始めています。
企業がTNFDに対応する際には、以下の5つのステップが重要になります。
① 事業と自然資本の関係を把握する
まず、自社の事業活動が自然環境にどのような影響を与えているのかを把握します。
例えば
- 水資源の利用
- 森林資源の利用
- 土地利用
- 生態系への影響
などが対象になります。
② リスクと機会を特定する
次に、自然資本の変化が事業にどのような影響を与えるかを分析します。
例えば
- 水不足による生産リスク
- 原材料調達リスク
- 規制強化
- 新しい市場機会
などが考えられます。
③ 指標と目標を設定する
自然資本に関する指標を設定し、改善目標を定めます。
例えば
などです。
④ ガバナンスを整備する
TNFDでは、取締役会レベルでの監督や経営戦略との統合が求められます。
⑤ 情報開示を行う
最後に、分析結果をサステナビリティレポートや統合報告書で開示します。
TNFDは今後、企業の情報開示の重要な要素になると考えられています。早期に対応を進めることで、自然資本リスクへの備えと企業価値向上につながるでしょう。
企業のサステナビリティ情報開示では、近年 TCFDとTNFDという2つのフレームワークが注目されています。
TCFDは気候変動、TNFDは自然資本を対象とした情報開示の枠組みです。
TCFDは、Task Force on Climate-related Financial Disclosuresが策定した、気候関連財務情報開示の国際的なフレームワークとして広く普及しました。
企業は、気候変動が自社の財務や事業に与える影響について、
ガバナンス
戦略
リスク管理
指標と目標
の4つの柱に沿って開示することが求められてきました。
しかし近年、このTCFDの内容は、International Sustainability Standards Board(ISSB)が策定するサステナビリティ開示基準に統合されています。
ISSBは、IFRS Foundationのもとで設立された国際的な基準設定機関であり、企業のサステナビリティ情報開示の国際基準を策定しています。
現在、気候関連の開示はISSBの
IFRS S1(サステナビリティ開示全般)
IFRS S2(気候関連開示)
という基準の中に位置づけられています。
特にIFRS S2は、TCFDの4つの柱をほぼそのまま引き継いでおり、実務上は
「TCFDの考え方をベースとしたISSB開示」
と理解することができます。
一方、自然資本や生物多様性に関する情報開示を目的として策定されたのが
Taskforce on Nature-related Financial Disclosures(TNFD)です。
TNFDは、気候変動だけでなく、
生物多様性
水資源
森林
土地利用
など、企業活動と自然環境の関係を対象としています。
TNFDもTCFDと同様に、
ガバナンス
戦略
リスク管理
指標と目標
という4つの柱で構成されており、企業にとっては既存のTCFD対応の枠組みを活用しながら導入することが可能です。
今後、企業のサステナビリティ情報開示は
気候変動(ISSB/旧TCFD)
自然資本(TNFD)
という2つの領域を統合して進めていくことが重要になると考えられています。
企業にとっては、気候変動だけでなく、生物多様性や自然資源への影響も含めた総合的なリスク管理と情報開示が求められる時代になりつつあります。